女性が男性を追い抜く日!?

2156年五輪の100m最速は女性? 英科学者予測

 過去約100年間の五輪優勝記録を分析すると、女子の方が男子より大きく記録を更新していた。この傾向が続けば、2156年の五輪で女子の優勝記録は8秒079となり、男子の優勝記録8秒098を追い抜くと予測された。統計的な誤差を考慮に入れると、最短で2064年に逆転現象が起こるという。
 そこで、ブログマップで言及しているページを追いかけると、「単にグラフを直線で延ばすなゴラァ」という極めて全うな反応が多い。そこで、Nature誌自身の紹介記事をチェックしてみよう。ちなみに元論文はお金を出さないと読めない。
Will women outpace men in 2156?
 一読して判る通り、これは「男女の記録差は生物学的なものか、それとも女性が男性に比べて社会的に十分なチャンスを与えられていないせいか?」という、科学というよりは政治の世界に属する論争である。で、今回の研究を発表したテータム氏(ちなみに男性)は、(疫学者だけあって?)社会的側面を重視すべきだと主張しているのであり、研究で示唆したいのは「女性が男性の記録を抜くとはいわなくても、拮抗することは十分に可能であり、今後も女性のアスリートにチャンスを広げていくべきであろう」ということであろう(だから、「抜くと予想するのは間違い」という批判は科学的に正しいが、彼にとっては痛くもかゆくもないだろう)。で、批判派は(Natureの記事中にも言及されているように)こういった研究が、例えばテストテロン(男性ホルモン)が筋肉やヘモグロビンを多くするという事実を無視していると批判するわけである。
 まぁ、実際には答えは両者の中間ぐらいにあって、短距離走のような競技は基本的に男性向けにデザインされているわけだし、追い越すということはあまりなさそうだけど、その差は社会的な条件次第でかなり縮まるはずだ、というところに気がつけばいいわけですね。それと、人間は結局個体差のほうが大きいんだから、オリンピック記録でジェンダー問題を云々しちゃだめだよ、っていう全うな回答にたどり着くのが生産的?