『不可触民と現代インド』[Amazon] / [bk1]

不可触民と現代インド (光文社新書) インドに今も残る深刻な差別の問題を、ダリットと呼ばれる被差別階層の視点から描いている。特に、被差別階層を組織してインド初の女性州首相(U.P.州)になり、現在もその影響力を増大させ続けている人民大衆党のマヤワティに関しての報告は貴重。
 でも、一番印象に残ったのは、ダリット出身で盗賊(←田舎に行くとまだいっぱいいるんですよ)になり、その首領が警官との銃撃戦で殺されたのを機に出家した仏僧の逸話。その話を聞いた警官たちは逮捕を取りやめ(仲間も殺されているのに!)、警察署長が前途を祝して僧衣をプレゼントしたという。さすがインド。っていうか、罪を憎んで人を憎まないのにも程ありすぎ(笑)。
 法治国家の前提というのは官憲が私怨や私欲に走ったときに崩れるというのが日本の常識ですが、官憲が人生悟り切っていても法律というのは上手く機能しないのだ、というのは実に衝撃的な発見でした。