ついでにインドの選挙についても…

Maharashtra Election 2004
 水曜日、インド最大の都市であり、経済の中心地であるムンバイを含むマハラシュトラ州で州議会選挙が行われた。開票は16日に行われ、インド時間の14時ごろ(日本では17時半ごろ)大勢が明らかになる見通し。投票率は63パーセント。ちなみに最も高い投票率だったのは州の大臣を務める会議派のハッサン・ムシャリフの選挙区で有権者の89パーセントが投票に出かけた。五月の国政選挙の時のマハラシュトラ投票率は54パーセントだったとのことなので、総じて高い関心を集めた選挙といえる。
 5月に大どんでん返しを見せた国政選挙後初の大規模な選挙であり、特にインドの経済を担う人々が本当に新政権に信頼を寄せているのか、あるいは旧与党BJPに対する単なる批判票だったのかが明らかになる、と考えられている。
 288議席(ちなみにインドは完全小選挙区制)に2600人以上が立候補する混線であるが、基本的にはインド下院で支配権を奪取したインド国民会議派を中核とする中道左派連合に対して、ヒンドゥ至上主義を掲げる二党、前国政与党BJP(バーラティヤ・ジャナタ党)と過激な言動を売りにムンバイ政財界を支配するカリスマ、バール・タッカレーの率いるシヴ・セナの連合体がぶつかる、という形になる。ただし、後者の連合はBJPのナンバー2で、最強硬派として知られるラル・クリシュナ・アドヴァニ前副首相とタッカレーが犬猿の仲として知られ、今一つ歩調が合わない(同州政権を会議派に明け渡すはめになったのも、主にこの二人の反目が原因)。
 かつてインド共産党結成の舞台となったマハラシュトラであるが、現在共産党は事実上支持基盤を失っている。変わって、後進カーストイスラム教徒の支持を延ばしているサマージヴァディ党と、ダリットと呼ばれるアウトカーストに支持基盤を置くバウジャン・サマージ党が第三局を形成する。(こうしてみると、セグリゲーションという流れは抗しがたいようにも見える)
 サマージヴァディ党はインドの社会主義政党社会主義インター加入政党)だったジャナタ・ダルが90年代初頭にBJPの指導する右派連合に合流したときに、ジャナタ・ダルから別れた批判派によって結成された政党であり、赤と緑の旗がシンボルになっている。
 BSPはインド最大の人口を誇るウッタル・プラデシュ州に基盤を置く地域政党で、同州では州政権も担ったことがある。同党の女性指導者マヤワティは最も若く州首相の地位に就くなど、政局運営には定評があり、被差別カーストにとってはアンベードカル以降で最大の指導者と見なされている。インド最大の被差別カースト人口を抱えるマハラシュトラは、BSPにとっても重要な票田の一つである。
 今のところ各種の予測は、「インド経済の設計士」マンモーハン・シン中央政府首相の堅調な政策運営もあって、会議派の勢いは揺るがないものと見られているが、過半数を確保できるかは微妙な情勢。とは言え、インドの世論調査などは電話も交通手段も満足にないような農村地域の意見が欠落しがちなど、先進国の選挙予測とは精度がまったく違うわけで、開票まで余談は許さない。