「大選択 地球の未来 2050年をどう切り開くか」

日経サイエンス 12月号 日経サイエンス 2005年 12月号
 遅まきながら『日経サイエンス』「特集:大選択 地球の未来 2050年をどう切り開くか」を読む。下記目次を見て頂ければわかるとおり、人類社会にとっての喫緊の課題が総覧的にフォローされていて有用性が高い。ただ、環境と貧困、人口の問題の相互関連などが有機的に見えて来るというように作れるともっと良かったかも知れない。
 また、いくつか問題もある。例えば、対談で国際開発高等教育機構の大塚啓二郎氏がネリカ米(アフリカの気候に合うように品種改良された陸稲)を誉めている(p.32)が、これが有効かどうかは、さまざまな面で疑問が残ると思う。
 あと、稀少生物種が集中する「ホットスポット」に関する記事(p.62~)では25カ所のホットスポットが紹介されている。これは基本的にはConservation Internationalのものに依拠しているのだと思うのだが、実はこのホットスポット、今年に入ってデータが改訂されて、34カ所選定されているのである。翻訳する記事が古かった可能性を感じなくもない。
 もちろん、25カなのと34カ所なので記事の論旨が変わるわけではないが、日本の読者にとってはこれは決定的な意味を持つだろう。なぜなら、34カ所版にはしっかりと日本列島絶滅危惧種の宝庫として登録されてしまっているからである。どちらの地図を採用するかで、日本の読者にとっての切迫感はだいぶ違ったであろう。

目次 ボトルネックを超えて/激変する人口バランス/極度の貧困をなくせるか?/生物多様性を守れ/豊かな「脱炭素社会」へ/小さな農業の大きな可能性/病気との闘い 求められる新戦略/持続可能性を追求する新たな経済学/優先順位を設定せよ
 ※言い忘れましたが、BLOG バカヤマ <角力部編>『1981年:貧困層15億人』経由で特集を知りました。多謝。